NISAは元本割れする可能性もある。それでも始めた方がいい理由を正直に書く

NISAは元本割れする可能性もある、それでも始めた方がいい理由

NISAは元本割れする可能性もある。それでも始めた方がいい理由を正直に書く

「NISAって絶対儲かるんですか?」と聞かれたら、正直に答えなければならない。

絶対ではない。元本割れする可能性は、ある。

これを認めたうえで、それでも私がNISAを続けている理由を書く。甘い言葉は一切なし。数字だけで判断してほしい。

目次

  1. 元本割れは本当に起きる
  2. NISAが実際にやっていること
  3. 「銀行に預けておく」と比べると何が違うか
  4. 長期投資の過去データを正直に見る
  5. 最悪のシナリオを考えておく
  6. それでも始めた方がいい5つの理由
  7. 今すぐ始めない方がいい人
  8. 元本割れリスクを下げる具体的な方法
  9. まとめ

投資と不安を表す天秤

1. 元本割れは本当に起きる

まずここを誤魔化さない。NISAで買える投資信託や株式は、価格が変動する金融商品だ。買った翌日に値下がりすれば、すぐに元本割れになる。

実際に起きた暴落の記録

暴落イベント 期間 S&P500の下落率 回復までの期間
ITバブル崩壊 2000〜2002年 ▲49% 約7年
リーマンショック 2008〜2009年 ▲57% 約5年半
コロナショック 2020年2〜3月 ▲34% 約5ヵ月
2022年利上げ局面 2022年1〜10月 ▲25% 約1年

リーマンショックでは、半分以上の資産が消えた。月5万円積み立てていた人が、一時的に半額以下の評価額を目にした。これは事実だ。

元本割れの現実をまとめると

  • 投資した翌日から元本割れする可能性がある
  • 過去の大暴落では資産が30〜57%減少した
  • 回復まで数ヵ月から数年かかることがある
  • 最悪のタイミングで売れば損失は確定する

この事実を知ったうえで、次を読んでほしい。

2. NISAが実際にやっていること

NISAを正確に理解している人は少ない。「税金がかからない口座」という説明だけでは半分しか伝わっていない。

NISAは「非課税で投資できる枠」だ。通常、株式や投資信託で利益が出ると約20.315%の税金がかかる。100万円の利益があれば約20万円が税金として消える。NISAではこれがゼロになる。

NISAの非課税効果(具体例)

条件 通常口座 NISA口座
月3万円×20年積立 元本720万円
年利5%で運用した場合の評価額 約1,233万円
運用益 約513万円
税金(20.315%) ▲約104万円 0円
手取り額 約1,129万円 約1,233万円

NISAを使うだけで約104万円の差が生まれる。

つまりNISAは「儲かる制度」ではなく、「儲かったときに損しない制度」だ。元本割れのリスクを消すものではない。

3. 「銀行に預けておく」と比べると何が違うか

「リスクが怖いから銀行預金にしておく」という選択肢を否定しない。ただし、その選択にもコストがある。

インフレというリスク

2022〜2024年、日本の物価は年2〜3%上昇した。銀行普通預金の金利は2024年時点で0.02〜0.1%程度。実質的に毎年2%前後の購買力が失われている。

比較項目 銀行預金 NISA(インデックス投資)
元本保証 あり(1,000万円まで) なし
名目上の減少リスク ほぼなし あり
インフレへの対応力 低い(実質目減り) 高い(長期的に物価に連動)
100万円・20年後の実質価値(インフレ2%時) 約67万円相当 変動(運用次第)
見えやすいリスク なし(安心感がある) あり(数字が下がる)

銀行預金の怖さは「数字が減らない」ことで損していると気づきにくい点だ。NISAの怖さは「数字が目に見えて減る」点。どちらにもリスクはある。

4. 長期投資の過去データを正直に見る

「長期投資は必ず報われる」は嘘だ。ただし、過去データは参考になる。

S&P500の保有期間別・元本割れ確率(過去データ)

保有期間 元本割れ確率(過去) 最大損失率(過去最悪)
1年 約26% ▲43%
5年 約12% ▲25%
10年 約6% ▲3%
15年 約1% +年率0.5%以上
20年 0%(過去実績) 最低でも年率1%以上

過去のS&P500では、20年以上保有した場合の元本割れは確認されていない。ただしこれは過去の話であり、未来を保証するものではない。

正直に言うと

米国・世界経済が今後も成長し続けるかどうかは誰にもわからない。日本のTOPIXは1989年のバブルピークを長年下回り続けた(2024年にようやく更新)。「長期なら必ず上がる」は保証ではなく、過去の傾向だ。

5. 最悪のシナリオを考えておく

投資を始める前に、最悪の事態を想定しておくことが重要だ。「最悪いくら失っても生活できるか」を確認する。

月3万円積立・5年後に暴落が来たケース

前提:月3万円×5年 → 元本180万円

▶ 年利5%で順調に運用 → 5年後評価額 約204万円

▶ そこで▲50%の暴落 → 評価額 約102万円

▶ 元本180万円に対して▲78万円の評価損

これが現実に起きうる。重要なのは、このとき売らなければ損失は確定しないという点だ。しかし生活費が必要で売らざるを得ない状況なら、損失は確定してしまう。

投資前に確認すべき3つのこと

  1. 生活防衛資金はあるか:急な出費に対応できる現金を3〜6ヵ月分手元に残す
  2. 投資資金は「5年以上使わないお金」か:近い将来使う予定のあるお金を投資に回さない
  3. 評価額が半分になっても売らずにいられるか:感情的に売ってしまう人は損失を確定させる

6. それでも始めた方がいい5つの理由

リスクを正直に書いたうえで、なぜ私がNISAを続けるかを説明する。

理由① 税金20%のハンデを背負い続けることのコスト

NISAを使わずに通常口座で投資すると、利益の約20%が毎回課税される。20年間の複利運用では、この差が数十万〜100万円単位になる。「リスクを避けた」はずが、確実に損をする選択でもある。

理由② やらない間も時間は過ぎる

NISAには年間投資上限がある(つみたて投資枠120万円)。去年使わなかった枠は翌年に繰り越せない。「十分に勉強してから始めよう」と思っているうちに、非課税で運用できた時間が消えていく。

1年遅く始めた場合のコスト(月3万円・年利5%・20年運用)

20年運用:約1,233万円 → 19年運用:約1,160万円
差額:約73万円(1年の遅れで生まれる損失)

理由③ 積立投資は「暴落を利用できる」

毎月一定額を積み立てる場合、価格が下がったとき同じ金額でより多くの口数を買える。暴落は損失ではなく「安く買えるチャンス」になる。一括投資では暴落がただの損失になるが、積立では平均コストが下がる効果がある。

理由④ 「全世界株式」に投資する意味

オルカン(全世界株式インデックス)に投資するということは、世界中の約3,000社以上の株を少しずつ持つことだ。これが全部ゼロになるとは、世界経済が完全崩壊することを意味する。そうなれば円預金も無価値だ。ある種の分散効果がある。

理由⑤ 「始めないリスク」は見えにくいが確実に存在する

銀行預金は名目上減らないが、インフレで実質価値が毎年目減りする。老後2,000万円問題の本質は「若いうちに複利を使わなかったツケ」だ。投資のリスクは目に見えるが、投資しないリスクは見えにくい。

選択 見えやすいリスク 見えにくいリスク
NISAで積立 評価額が下がる
銀行預金のみ (ほぼなし) インフレで実質目減り・老後資金の不足

7. 今すぐ始めない方がいい人

「始めた方がいい」と言いながら、始めない方がいい人もいる。正直に書く。

以下に当てはまるなら、NISAより先にやることがある

  • 高金利の借金がある人:消費者金融・カードローン(年利15〜18%)は先に返済。投資の期待リターンより借金の利息の方が高い
  • 生活防衛資金がない人:3〜6ヵ月分の生活費(最低でも30万円)が手元にない状態で投資すると、暴落時に売らざるを得なくなる
  • 来年以内に使う予定のあるお金:結婚・引越し・車購入など近い将来使う資金は投資に入れない
  • 精神的に耐えられない人:評価額が30%下がっても「安く買えた」と思えない人は、暴落時に感情的な売却をして損失を確定させる可能性が高い

投資は「余裕資金でやるもの」という原則は変わらない。

8. 元本割れリスクを下げる具体的な方法

① 積立を続ける(一括投資しない)

毎月一定額を積み立てることで、高値づかみのリスクを下げられる。一括で100万円を投資するより、毎月1万円を100ヵ月積み立てる方が平均取得コストが安定しやすい。

② 全世界分散の商品を選ぶ

個別株は1社の業績で大きく変動する。インデックスファンドは世界中の多数の企業に分散するため、一社の破綻が全体に与える影響は小さい。

NISAで選びやすい低コストインデックスファンドの例

  • eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):信託報酬0.05775%
  • eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):信託報酬0.09372%
  • SBI・全世界株式インデックス・ファンド:信託報酬0.1022%

③ 暴落時に売らないルールを作る

「評価額が30%下がっても5年は売らない」など、事前にルールを決めておく。暴落中に感情で判断すると必ず後悔する。

④ 自分が耐えられる額だけ投資する

月3万円投資して「もし半分になったら16万円の含み損」と計算してみる。それに耐えられないなら月1万円にする。リスク許容度を超えた投資は続けられない。

⑤ 売る必要が出ない資金管理をする

最も重要なリスク管理は「暴落時に売らなくていい状態を維持すること」だ。生活防衛資金を別口座に確保し、投資資金は「5〜10年は使わない」と割り切った額にする。

9. まとめ

NISAは「元本割れしない安全な制度」ではない。それははっきり言える。

ただし、NISAは「儲かったときに税金を取られない制度」だ。長期・積立・分散という原則を守れば、過去データでは元本割れの確率は大幅に下がる。そして、何もしないことにも「インフレによる実質目減り」というリスクがある。

NISAについての正直な結論
✅ 元本割れする可能性はある。否定しない
✅ 長期・積立・分散で過去の元本割れ確率は低下した(未来の保証ではない)
✅ 非課税メリットは確実に存在する(20年で100万円単位の差になりうる)
✅ やらないことにもリスクがある(インフレ・複利の機会損失)
✅ 高金利借金・生活防衛資金なしでは始めない方がいい
✅ 最大のリスク管理は「暴落時に売らなくていい資金管理」

「絶対儲かる」と言う人を信じてはいけない。「絶対損しない」も嘘だ。リスクを理解したうえで、長期的に続けられる金額で始める。それだけのことだ。

⚠️ 投資リスクについて

本記事は情報提供を目的としており、特定の投資商品を推奨するものではありません。投資信託・株式への投資は元本保証がなく、価格変動により損失が生じる可能性があります。過去の運用実績は将来の成果を保証しません。投資判断はご自身の責任で行ってください。