NISAは元本割れする可能性もある、それでも始めた方がいい理由
NISAは元本割れする可能性もある。それでも始めた方がいい理由を正直に書く
「NISAって絶対儲かるんですか?」と聞かれたら、正直に答えなければならない。
絶対ではない。元本割れする可能性は、ある。
これを認めたうえで、それでも私がNISAを続けている理由を書く。甘い言葉は一切なし。数字だけで判断してほしい。
目次
- 元本割れは本当に起きる
- NISAが実際にやっていること
- 「銀行に預けておく」と比べると何が違うか
- 長期投資の過去データを正直に見る
- 最悪のシナリオを考えておく
- それでも始めた方がいい5つの理由
- 今すぐ始めない方がいい人
- 元本割れリスクを下げる具体的な方法
- まとめ
1. 元本割れは本当に起きる
まずここを誤魔化さない。NISAで買える投資信託や株式は、価格が変動する金融商品だ。買った翌日に値下がりすれば、すぐに元本割れになる。
実際に起きた暴落の記録
| 暴落イベント | 期間 | S&P500の下落率 | 回復までの期間 |
|---|---|---|---|
| ITバブル崩壊 | 2000〜2002年 | ▲49% | 約7年 |
| リーマンショック | 2008〜2009年 | ▲57% | 約5年半 |
| コロナショック | 2020年2〜3月 | ▲34% | 約5ヵ月 |
| 2022年利上げ局面 | 2022年1〜10月 | ▲25% | 約1年 |
リーマンショックでは、半分以上の資産が消えた。月5万円積み立てていた人が、一時的に半額以下の評価額を目にした。これは事実だ。
元本割れの現実をまとめると
- 投資した翌日から元本割れする可能性がある
- 過去の大暴落では資産が30〜57%減少した
- 回復まで数ヵ月から数年かかることがある
- 最悪のタイミングで売れば損失は確定する
この事実を知ったうえで、次を読んでほしい。
2. NISAが実際にやっていること
NISAを正確に理解している人は少ない。「税金がかからない口座」という説明だけでは半分しか伝わっていない。
NISAは「非課税で投資できる枠」だ。通常、株式や投資信託で利益が出ると約20.315%の税金がかかる。100万円の利益があれば約20万円が税金として消える。NISAではこれがゼロになる。
NISAの非課税効果(具体例)
| 条件 | 通常口座 | NISA口座 |
|---|---|---|
| 月3万円×20年積立 | 元本720万円 | |
| 年利5%で運用した場合の評価額 | 約1,233万円 | |
| 運用益 | 約513万円 | |
| 税金(20.315%) | ▲約104万円 | 0円 |
| 手取り額 | 約1,129万円 | 約1,233万円 |
NISAを使うだけで約104万円の差が生まれる。
つまりNISAは「儲かる制度」ではなく、「儲かったときに損しない制度」だ。元本割れのリスクを消すものではない。
3. 「銀行に預けておく」と比べると何が違うか
「リスクが怖いから銀行預金にしておく」という選択肢を否定しない。ただし、その選択にもコストがある。
インフレというリスク
2022〜2024年、日本の物価は年2〜3%上昇した。銀行普通預金の金利は2024年時点で0.02〜0.1%程度。実質的に毎年2%前後の購買力が失われている。
| 比較項目 | 銀行預金 | NISA(インデックス投資) |
|---|---|---|
| 元本保証 | あり(1,000万円まで) | なし |
| 名目上の減少リスク | ほぼなし | あり |
| インフレへの対応力 | 低い(実質目減り) | 高い(長期的に物価に連動) |
| 100万円・20年後の実質価値(インフレ2%時) | 約67万円相当 | 変動(運用次第) |
| 見えやすいリスク | なし(安心感がある) | あり(数字が下がる) |
銀行預金の怖さは「数字が減らない」ことで損していると気づきにくい点だ。NISAの怖さは「数字が目に見えて減る」点。どちらにもリスクはある。
4. 長期投資の過去データを正直に見る
「長期投資は必ず報われる」は嘘だ。ただし、過去データは参考になる。
S&P500の保有期間別・元本割れ確率(過去データ)
| 保有期間 | 元本割れ確率(過去) | 最大損失率(過去最悪) |
|---|---|---|
| 1年 | 約26% | ▲43% |
| 5年 | 約12% | ▲25% |
| 10年 | 約6% | ▲3% |
| 15年 | 約1% | +年率0.5%以上 |
| 20年 | 0%(過去実績) | 最低でも年率1%以上 |
過去のS&P500では、20年以上保有した場合の元本割れは確認されていない。ただしこれは過去の話であり、未来を保証するものではない。
正直に言うと
米国・世界経済が今後も成長し続けるかどうかは誰にもわからない。日本のTOPIXは1989年のバブルピークを長年下回り続けた(2024年にようやく更新)。「長期なら必ず上がる」は保証ではなく、過去の傾向だ。
5. 最悪のシナリオを考えておく
投資を始める前に、最悪の事態を想定しておくことが重要だ。「最悪いくら失っても生活できるか」を確認する。
月3万円積立・5年後に暴落が来たケース
前提:月3万円×5年 → 元本180万円
▶ 年利5%で順調に運用 → 5年後評価額 約204万円
▶ そこで▲50%の暴落 → 評価額 約102万円
▶ 元本180万円に対して▲78万円の評価損
これが現実に起きうる。重要なのは、このとき売らなければ損失は確定しないという点だ。しかし生活費が必要で売らざるを得ない状況なら、損失は確定してしまう。
投資前に確認すべき3つのこと
- 生活防衛資金はあるか:急な出費に対応できる現金を3〜6ヵ月分手元に残す
- 投資資金は「5年以上使わないお金」か:近い将来使う予定のあるお金を投資に回さない
- 評価額が半分になっても売らずにいられるか:感情的に売ってしまう人は損失を確定させる
6. それでも始めた方がいい5つの理由
リスクを正直に書いたうえで、なぜ私がNISAを続けるかを説明する。
理由① 税金20%のハンデを背負い続けることのコスト
NISAを使わずに通常口座で投資すると、利益の約20%が毎回課税される。20年間の複利運用では、この差が数十万〜100万円単位になる。「リスクを避けた」はずが、確実に損をする選択でもある。
理由② やらない間も時間は過ぎる
NISAには年間投資上限がある(つみたて投資枠120万円)。去年使わなかった枠は翌年に繰り越せない。「十分に勉強してから始めよう」と思っているうちに、非課税で運用できた時間が消えていく。
1年遅く始めた場合のコスト(月3万円・年利5%・20年運用)
20年運用:約1,233万円 → 19年運用:約1,160万円
差額:約73万円(1年の遅れで生まれる損失)
理由③ 積立投資は「暴落を利用できる」
毎月一定額を積み立てる場合、価格が下がったとき同じ金額でより多くの口数を買える。暴落は損失ではなく「安く買えるチャンス」になる。一括投資では暴落がただの損失になるが、積立では平均コストが下がる効果がある。
理由④ 「全世界株式」に投資する意味
オルカン(全世界株式インデックス)に投資するということは、世界中の約3,000社以上の株を少しずつ持つことだ。これが全部ゼロになるとは、世界経済が完全崩壊することを意味する。そうなれば円預金も無価値だ。ある種の分散効果がある。
理由⑤ 「始めないリスク」は見えにくいが確実に存在する
銀行預金は名目上減らないが、インフレで実質価値が毎年目減りする。老後2,000万円問題の本質は「若いうちに複利を使わなかったツケ」だ。投資のリスクは目に見えるが、投資しないリスクは見えにくい。
| 選択 | 見えやすいリスク | 見えにくいリスク |
|---|---|---|
| NISAで積立 | 評価額が下がる | — |
| 銀行預金のみ | (ほぼなし) | インフレで実質目減り・老後資金の不足 |
7. 今すぐ始めない方がいい人
「始めた方がいい」と言いながら、始めない方がいい人もいる。正直に書く。
以下に当てはまるなら、NISAより先にやることがある
- 高金利の借金がある人:消費者金融・カードローン(年利15〜18%)は先に返済。投資の期待リターンより借金の利息の方が高い
- 生活防衛資金がない人:3〜6ヵ月分の生活費(最低でも30万円)が手元にない状態で投資すると、暴落時に売らざるを得なくなる
- 来年以内に使う予定のあるお金:結婚・引越し・車購入など近い将来使う資金は投資に入れない
- 精神的に耐えられない人:評価額が30%下がっても「安く買えた」と思えない人は、暴落時に感情的な売却をして損失を確定させる可能性が高い
投資は「余裕資金でやるもの」という原則は変わらない。
8. 元本割れリスクを下げる具体的な方法
① 積立を続ける(一括投資しない)
毎月一定額を積み立てることで、高値づかみのリスクを下げられる。一括で100万円を投資するより、毎月1万円を100ヵ月積み立てる方が平均取得コストが安定しやすい。
② 全世界分散の商品を選ぶ
個別株は1社の業績で大きく変動する。インデックスファンドは世界中の多数の企業に分散するため、一社の破綻が全体に与える影響は小さい。
NISAで選びやすい低コストインデックスファンドの例
- eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー):信託報酬0.05775%
- eMAXIS Slim 米国株式(S&P500):信託報酬0.09372%
- SBI・全世界株式インデックス・ファンド:信託報酬0.1022%
③ 暴落時に売らないルールを作る
「評価額が30%下がっても5年は売らない」など、事前にルールを決めておく。暴落中に感情で判断すると必ず後悔する。
④ 自分が耐えられる額だけ投資する
月3万円投資して「もし半分になったら16万円の含み損」と計算してみる。それに耐えられないなら月1万円にする。リスク許容度を超えた投資は続けられない。
⑤ 売る必要が出ない資金管理をする
最も重要なリスク管理は「暴落時に売らなくていい状態を維持すること」だ。生活防衛資金を別口座に確保し、投資資金は「5〜10年は使わない」と割り切った額にする。
9. まとめ
NISAは「元本割れしない安全な制度」ではない。それははっきり言える。
ただし、NISAは「儲かったときに税金を取られない制度」だ。長期・積立・分散という原則を守れば、過去データでは元本割れの確率は大幅に下がる。そして、何もしないことにも「インフレによる実質目減り」というリスクがある。
| NISAについての正直な結論 |
|---|
| ✅ 元本割れする可能性はある。否定しない |
| ✅ 長期・積立・分散で過去の元本割れ確率は低下した(未来の保証ではない) |
| ✅ 非課税メリットは確実に存在する(20年で100万円単位の差になりうる) |
| ✅ やらないことにもリスクがある(インフレ・複利の機会損失) |
| ✅ 高金利借金・生活防衛資金なしでは始めない方がいい |
| ✅ 最大のリスク管理は「暴落時に売らなくていい資金管理」 |
「絶対儲かる」と言う人を信じてはいけない。「絶対損しない」も嘘だ。リスクを理解したうえで、長期的に続けられる金額で始める。それだけのことだ。
⚠️ 投資リスクについて
本記事は情報提供を目的としており、特定の投資商品を推奨するものではありません。投資信託・株式への投資は元本保証がなく、価格変動により損失が生じる可能性があります。過去の運用実績は将来の成果を保証しません。投資判断はご自身の責任で行ってください。


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